Human Capital Reporting(人的資本報告)
Human Capital Reportingとは、2020年に米国証券取引委員会(SEC)によって米国の上場企業に課された新しい報告義務のことである。ESG投資への関心の高まりや2019年のISO 30414制定を受ける形で、SECも米国の証券取引市場に上場する企業に対して、非財務情報や非財務資本の開示を求める姿勢を強化してきた。
SECは、財務情報に関する「Regulation S-X」、非財務情報に関する「Regulation S-K」という2つの規程で開示すべき情報を列挙している。企業は、それらの項目について、開示用の様式であるForm10-K(外国企業の場合はForm20-F)にのっとってSEC へ提出する。また、株主に対する年次報告も、基本的にこのフォーマットをもちいて行われている。
2020年8月に、SECは非財務情報の開示項目規程であるRegulation S-Kの第101項(c)の改訂を発表した。具体的に盛り込まれたのは、登録者(上場企業)の雇用者の数を含む人的資本という資源の状況、および、登録者が事業経営にあたって重視する人的資本に関わる指標や目標の記述である。具体的項目や開示の方法までを定めてはいないが、例示として登録者の事業や従業員の性質に応じた人材開発、入社や定着の促進、離職防止にかかわる施策や目標ということが挙げられている。
「登録者が事業経営にあたって重視する項目を」という記載があるとおり、報告書に人的資本にかかわるどのような情報を開示するか、どのように開示するかについては、企業自身が判断して開示を進めていくことになる。
米国でのこの動きは、人的資本を重視しようとする世界的な流れを一層確実なものにしたといえる。日本でも、世界のこうした動きに追随する形で、人的資本開示のルール化がコーポレートガバナンス・コードの改訂によって行われた。