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コーポレートガバナンス・コード

文/米川春馬

コーポレートガバナンス・コードとは、企業が各ステークホルダーの立場を踏まえた上で透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み(企業統治/コーポレートガバナンス)の実効性を高めることに資する、主要な原則を取りまとめたものだ。日本では、金融庁と東京証券取引所の共同による原案の提出ののち、2015年6月に全上場企業に適用されるコーポレートガバナンス・コードとして正式に制定された。その後、2018年と2021年に改訂されている。

コーポレートガバナンス・コードには、「株主の権利・平等性の確保」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主との対話」の5つの基本原則が定められている。

2021年6月の改訂にあたって、サステナビリティや人的資本にかかわる項目が付加された。人的資本にかかわる内容は2つあり、1つ目は取締役会の機能発揮にかかわるもの、2つ目は、企業の中核人材における多様性の確保にかかわるものである。

1つ目の取締役会の機能発揮では、具体的に以下のような原則の変更・追加が行われた。

・プライム市場上場会社は独立社外取締役を少なくとも3分の1選任すること
・指名委員会・報酬委員会を設置すること(プライム市場上場会社は、独立社外取締役を委員会の過半数選任すること)
・取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係(スキルマトリックス)を開示すること

2つ目の企業の中核人材における多様性確保では、以下のような原則の変更・追加が行われた。

管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標を設定すること
多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表すること

コーポレートガバナンス・コードは、原則のみを提示し、細部の取り組みについては各企業に任せる「原則主義」と、遵守を義務づけるのではなく、遵守しない場合には説明を求める「コンプライ・オア・エクスプレイン」方式を採っている。したがって罰則などは存在しないが、多くの上場企業と投資家がコーポレートガバナンス・コードをもとにした対話を始めていることを考えれば、コードの求める企業統治を実現するための一層の努力が求められていることは明らかだ。