人的資本経営ラボGROWIN' EGG

コクヨ 3カ月に1度、自分で働き方を選ぶ「実験中」

コクヨ株式会社 働き方改革室室長 新居臨さんに聞く(1)

コロナ禍を経て、在宅勤務をはじめとするリモートワークという働き方が日本国内の多くの法人企業で受け入れられつつある。しかし、「チーム力を高めるためには、やはり対面でのコミュニケーションが大切」「離れて働くことに伴うマネジメントの難しさから、出勤日数を増やしている」「とはいえ、従業員はワークライフバランスを保ち易い在宅勤務を希望」などの声も挙がり、“働く場所”についての価値観は、今なお混乱中、といえそうだ。そんな中で、働く場所を前向きに進化させている企業に、その戦略や最前線のスタイルを聞く。今回はコクヨの働き方改革室室長・新居臨さんに、コクヨが掲げる「Life Based Working」やコクヨ式ハイブリッドワークについて詳しく伺った。(今回は前後編のうち前編)
●お話を伺ったのは
コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部 働き方改革室 室長
新居 臨さん

聞き手 羽生 祥子、石原 直子(「人的資本経営ラボGROWIN’ EGG」編集長・副編集長)
文    米川 青馬

タテの文化から脱却して自律共創の人になってほしい

――コクヨはいまどのような働き方改革を推し進めているのですか?

新居:私たちコクヨは、2024年で創業119年目の製造メーカーです。私たちの文房具やオフィス家具は、日本経済が右肩上がりだった高度成長期には飛ぶように売れました。その時期は、従業員が決められた時間内で、決められたことを早く正確に実行することが価値の源泉でした。また、コクヨは今でもそうですが、オーナー企業であるため、トップの強いリーダーシップの元で従業員の意識行動のベクトルが合わせ易く、ひとつの方向に向かって素早く行動することが得意でした。一方で、業務のひとつひとつにあまり創意工夫をせず、上長の指示を待つ文化も醸成され、いわゆる「上意下達のタテの文化」が根づいていました。一昔前は、その社風が最適解だったのです。

しかし、市場環境の変化やユーザーニーズの多様性変化は、その速度を増しています。これからの社会で生き残るには、言われたことをやる、という文化では難しいのは明らかです。これからのコクヨは、「働く」「学ぶ・暮らす」領域におけるさまざまな顧客ニーズに応え、新しい顧客体験価値を創出する多様な事業の集合体になっていきます。そこでは、社員ひとりひとりの「自律共創」の意識行動が欠かせないのです。一人ひとりが、社内外のメンバーとすばやく集合・離散しながら実験を繰り返し、等身大の課題解決をどんどん行う。そんな風に自分アクションのイニシアティブを自分自身でとってもらおうと思ったら、どんな働き方が必要か。そこからスタートしたのがコクヨの働き方改革なんです。

デザイナーから働き方改革室長になった新居さん

私たちは、2018年に働き方改革タスクフォースを立ち上げ、働く環境・働く制度・働く仕組みの3つの柱で、変革の実験を繰り返してきました。タスクフォースは今は「働き方改革室」に進化しましたが、私からすると、働き方改革室は、経営企画の一端なのです。ビジネスとしてありたい姿を実現するために、一人ひとりにどうなってもらいたいか、それを実現できる働き方はどんなものであるべきか。その順番で考えて、実験しています。そのなかでポジティブな変化に繋がったものを社会に広く発信し、日本全体の働き方を豊かにすることも見据えた組織です。