人的資本経営ラボGROWIN' EGG

コクヨ 新入社員とベテランの交流空間「育むフロア」

コクヨ株式会社 働き方改革室室長 新居臨さんに聞く(2)

コロナ禍を経て、在宅リモートの勤務スタイルが受け入れられつつある日本企業。しかし、「チーム力を高めるためには、やはり対面が大切」「マネジメントの難しさから、出勤回数を増やしている」「しかし、従業員は在宅勤務を希望」などの声も挙がっている。“働く場所”についての価値観は、ただいま混在・混乱中で、企業や管理職の抱える悩みは大きい。そんな中で、働く場所を前向きに進化させている企業に、その戦略や最前線のスタイルを聞く。今回はコクヨの働き方改革室室長・新居臨さんに、1on1や新入社員育成、工場の働き方改革について伺った。(今回は前後編のうち後編)
●お話を伺ったのは
コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部 働き方改革室 室長
新居 臨さん

聞き手 羽生 祥子、石原 直子(「人的資本経営ラボGROWIN’ EGG」編集長・副編集長)
文    米川 青馬

1on1を根付かせるために、ツールを作り、チョコを準備

――ハイブリッドワーク以外の施策についても教えてください。

新居:2023年は「マネジメント改革」をテーマに据えて、労働の質、社内コミュニケーションの質を向上させるために、いくつかの実験を試みました。マネジャーがメンバーの豊かな人生を応援するためには、やはり1対1のコミュニケーションも重要だと、認識を新たにしています。そこで、注目したのが「1on1」です。これまでも組織内で散文的に実施されていましたが、定期的に実施する1on1の社内ルールを決めたり、社内で開発した「Agendary(アジェンダリー)」という会議支援ツールを活用しています。Agendaryは、会議前にアジェンダを作成し、参加者に共有するツールです。1on1においては、相談者が上司との1on1スケジュールを設定する際、事前に相談者が相談項目を書き込んでおくようにしています。また、Googleカレンダーと連携していて、設定したスケジュールはタイムリーに反映されるようになっており、オフィスでリアルで対話したい場合、場所の予約まで全て連動します。さらに、上司が相談者との1on1のあとに振り返りコメントを入れたりすることもできます。

「1on1ツールも独自開発する実験精神がスゴイですね」(羽生編集長)

――1on1はマネジャーの負荷が高いともいわれますが、他にも何か工夫がありますか?

新居:現在、基本的には2週間に一度の1on1を推奨しています。とはいえ、頻度もお仕着せのルールにしているつもりはなく、マネジャーとメンバーの関係のなかで自由に決めてもらったらいいというのが前提です。そして、ちょっと面白い工夫として、マネジャーがメンバーに渡せるチョコレートを新たに用意してみたんです。1on1のたびに小さなチョコをもらえるのですが、その包装紙にちょっとした質問が書かれているんです。「昨日の夜ごはん、なに食べた?」とか。その質問から対話をスタートするもよし、他に話したいことがあるならもちろんそれでもよし。対話のきっかけツールの一つとして、楽しんで活用してもらいたいと思っています。

また、1on1の状態についてもデータで把握しようとしています。1on1の実施率や実施の形態と、上司のパフォーマンス指標や従業員満足度サーベイを組み合わせて多様な視点から分析しています。たとえばコクヨの1on1は、リアルでもWebでもハイブリッドでもOKとしていて、リアル実施が約半分、Web・ハイブリッド実施が約半分の比率です。コロナ禍以降、Web・ハイブリッドの会議が増えた企業も多いと思いますが、コクヨの場合はリアルでの1on1の比率がWeb・ハイブリッドと同程度になっています。
こうしたさまざまな取り組みの結果、2023年はルールに則った定期的な1on1の実施率が、昨年度から倍増するまで大幅に高めることができました。