人的資本経営ラボGROWIN' EGG

ISO 30414(アイエスオー サンゼロヨンイチヨン)

文/米川春馬

ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)は、国際的に標準化、統一化することが望ましいさまざまな事物についての国際規格(ISO規格)の策定を推進する団体で、スイスに本部を置く。

ISO規格には大きく分けて、製品に対する規格(ネジ、カードのサイズ、非常口マークなど)と、マネジメントシステムに対する規格(品質マネジメントシステム【ISO 9001】、環境マネジメントシステム【ISO 14001】、情報セキュリティマネジメントシステム【ISO/IEC 27001】など)がある。企業には、ISO規格を満たしているという認証を取得することで、信頼できる経営をしていることを外部にアピールできるメリットがある。

ISO 30414は、2018年、企業における人的資本の状態の情報開示のためのガイドラインとして制定された。英文のタイトルは「Human Resource Management―Guidelines for Internal and External Human Capital Reporting」となっており、11の領域、58の指標に関して人的資本の情報開示をするよう求めている

ISO 30414の11領域

ISO 30414では11の領域について情報開示するよう求められる
出典:「ISO 30414:2018 Human resource management — Guidelines for internal and external human capital reporting」をもとに編集部作成

たとえば、リーダーシップの領域には、「リーダーシップに対する信用」「管理する従業員数」「リーダーシップの開発」の3つの指標があり、これらを数値化などの方法で可視化することが求められる。

ISO 30414が制定された背景には、企業における価値創造の源泉としての人の重要性がかつてなく高まっている現代においては、企業を評価するのに、人や組織の状態、それらに対してどのような目を配り、手をかけているかの情報が欠かせないということがある。

ISO 30414は、こうした資本市場が求める人的資本に関する情報開示にあたってのフレームになり得る。たとえば、ISO 30414の制定を受け、米国証券取引委員会(SEC)は、2020年に上場企業に対して人的資本に関する情報開示を求める「Human Capital Reporting」の条項を発表した。また日本でも、2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂では、非財務情報である人材の状態などの情報の開示を求める項目が盛り込まれた

一方で、他のISO規格と同様、ISO 30414の認証を取得する過程で、一つひとつの項目について検討することを通じて、企業内の人的資本への取り組みのレベルが一段向上することも期待されている。