人的資本経営ラボGROWIN' EGG

2022年、企業が人的資本経営に向けて踏み出すべき第一歩は何か?

オープニング鼎談:岩本隆×徳谷智史×羽生祥子(4) これから人的資本経営に向き合う企業に向けて

「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」の創刊記念特集は、引き続き人的資本経営への造詣が深い岩本隆さん(山形大学学術研究院産学連携教授)、エッグフォワードのファウンダーで代表取締役社長の徳谷智史、「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」編集長の羽生祥子の3人による鼎談をお送りする。鼎談の最終回となる今回は、日本独自のイノベーション力や2022年に踏み出すべき第一歩が話題に上った。日本企業はこれから、人的資本経営の第一歩をいったいどう踏み出したらよいのだろうか。

2022年、まずは経営陣の目線を揃えよう

羽生:では2022年、企業が人的資本経営に向けて踏み出すべき第一歩は何でしょうか?

岩本:一番大事なのは、社内で徹底的に議論して、自分たちにとっての人的資本経営とは何か、自分たちがどうなりたいから人的資本経営を導入するのかを、明確にすることです。そうやって最初に社員一人ひとりが具体的に自分自身を腹落ちさせるプロセスを経る。それがなければ、人的資本経営の導入は成功しないでしょう。

徳谷:同感です。特に経営陣の腹落ちがポイントですね。私たちのお客様企業で、経営の了承を得た上で、人事が主導して人的資本経営を進めていたのですが、あるとき突然、プロジェクト自体がストップしてしまったという事例がありました。なぜそんなことが起きたかというと、経営陣の目線がバラバラで、人的資本経営を導入する目的や意義が共通認識になっていなかったからです。経営陣全員が人的資本経営をよく学び、その本質を理解して、なぜいま必要なのか、どんなプロセスを踏むのか、目線を揃えることが欠かせません。具体的には、企業のパーパスやミッションを改めて明示化することと、今の自社における人的資本の状況を把握すること。この両極をしっかり自覚するところがスタート地点になると思っています。

羽生:岩本さん、徳谷さん、本日はありがとうございました。最後に私から、生まれたばかりの「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」の未来について少し説明します。私たちにとって、EGGとは「起点」や「人の可能性」を指す言葉です。まさに人的資本経営とつながるキーワードです。人の可能性を信じて、人的資本経営を実践するうえで本当に役立つ情報をお伝えし、人事の皆さんの伴走者になっていきたい。GROWIN' EGGが、人的資本経営の起点になるメディアになればいいな、と思っています。うまくいかなかった事例も含めて、具体例を豊富に提供していきます。働くことは生きることであり、喜怒哀楽の塊です。組織と働く方々が変化し、より良く生きるための実践の場=ラボを作っていければと思います。

人的資本経営ラボGROWIN' EGGはこの鼎談から第一歩を踏み出した
  • 岩本隆(いわもと・たかし)さん

    山形大学学術研究院産学連携教授

    東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より山形大学学術研究院産学連携教授。外資系グローバル企業での最先端技術の研究開発や研究開発組織のマネジメントの経験を活かし、DIでは、技術系企業に対する「技術」と「戦略」を融合させた経営コンサルティングや、「技術」・「戦略」・「政策」の融合による産業プロデュースなど、戦略コンサルティング業界における新領域を開拓。

  • 徳谷智史(とくや・さとし)

    エッグフォワード 代表取締役社長

    京都大学卒業後、大手戦略コンサルティング会社に入社。国内プロジェクトリーダーを経験後、アジアオフィスを立ち上げ、同代表に就任。その後「いまだない価値を創り出し、人が本来持つ可能性を実現し合う世界を創る」というミッションのもと、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサルなど、トップ企業に対する企業変革のコンサルティングや、スタートアップ各社への出資・支援などを幅広く手がける。近年は、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組み、事業開発や、教育機関支援にも携わる。NewsPicksキャリア分野プロフェッサー。東洋経済オンラインなどにも連載を持つ。著書に『いま、決める力』等がある。Podcast「経営中毒~誰にも言えない社長の孤独」メインMC。

  • 羽生祥子(はぶ・さちこ)

    「人的資本経営ラボGROWIN’ EGG」編集長

    著作家・メディアプロデューサー、株式会社羽生プロ代表取締役社長。日経xwoman客員研究員、京都大学「令和版・ジェンダー論」講師。京都大学卒業(農学部入学、総合人間学部卒)。2000年に卒業後、渡仏。帰国後に無職、ベンチャー、契約社員など多様な働き方を経験しサバイバル。2002年編集工学研究所で松岡正剛に師事し「千夜千冊」に関わる。2005年日経ホーム出版社入社。2012年「日経マネー」副編集長。2013年「日経DUAL」創刊編集長。2018年「日経xwoman」総編集長。「日経ARIA」創刊編集長。2020年「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」始動。近著『多様性って何ですか? D&Iジェンダー平等入門』。内閣府「第4次少子化社会対策大綱策定のための検討会」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員等。2児の母、趣味はピアノと朝ラン。