人的資本経営ラボGROWIN' EGG

トップランナーの創出を目指した人材育成に舵を切ろう

オープニング鼎談:岩本隆×徳谷智史×羽生祥子(3) 平等な機会提供から、個別の機会提供へ

「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」の創刊記念特集・第3回のテーマは、「人材育成」と「キャリア形成」だ。私たちは、人的資本経営時代の人材育成やキャリア形成をどのように考えたらよいのか。人的資本経営への造詣が深い岩本隆さん(山形大学学術研究院産学連携教授)、エッグフォワードのファウンダーで代表取締役社長の徳谷智史、「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」編集長の羽生祥子の3人が語り合った。

優秀人材を早期から抜擢育成する日本企業が増えている

徳谷:そのとおりだと思います。私のほうから付け加えると、日本企業は、いま岩本さんのおっしゃったことに気づき始めています。その証拠に、人材育成の方針が、平等な機会提供から「偏った機会提供」に変わってきているんです。

たとえば、優秀人材を早期から抜擢育成する企業が増えています。若手抜擢育成の典型的な仕組みは、まず若手社員全員に将来どのようなキャリアを歩みたいかに向き合ってもらう。会社からの押し付けではなく、本人に意思表示させたうえで次世代経営人材候補をピックアップして、組織を挙げて、時間をかけて経営やビジネス全体を見渡せる人材に育て上げていくというものです。これまで典型的に行われてきた「2年目研修」、「5年目研修」といった、平等かつ一律に行う研修施策は、いまや意味があるのかどうかを問われ始めています。

羽生:とはいえ、年功序列が色濃く残っている限りは、どんな基準で誰を抜擢すべきか、マネジャーはただ託されるだけでは悩ましいのではないでしょうか。「選ばれなかった人もフォローして、やる気を維持させよ」など、人事からのお題も飛んできたりしますし……。徳谷さんのおっしゃる「偏った機会提供」がしやすい仕組みはあるのでしょうか?

「年功序列にとらわれず、優れた才能に思いきった投資をする人材育成が必要なんですね」(羽生)

岩本:ジョブ型雇用に変えれば、選抜しやすくなりますよ。ジョブ型雇用では、個別のポジションごとにスキルや経験を定義しますから、人材を抜擢する際の選考基準がわかりやすくなり、周囲にも抜擢の理由を説明しやすくなります。こういうスキル・経験がある人だから昇格させるのだ、この研修に選抜するのだ、と言いやすくなるわけです。