トップランナーの創出を目指した人材育成に舵を切ろう
オープニング鼎談:岩本隆×徳谷智史×羽生祥子(3) 平等な機会提供から、個別の機会提供へ
「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」の創刊記念特集・第3回のテーマは、「人材育成」と「キャリア形成」だ。私たちは、人的資本経営時代の人材育成やキャリア形成をどのように考えたらよいのか。人的資本経営への造詣が深い岩本隆さん(山形大学学術研究院産学連携教授)、エッグフォワードのファウンダーで代表取締役社長の徳谷智史、「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」編集長の羽生祥子の3人が語り合った。
たった一人のトップランナーが、世界を変えることだってできる
羽生:人的資本経営では、人材への投資が重要ですね。もっともベーシックな施策である人材育成では、何を目指したらいいですか?
岩本:私が強調したいのは、「トップランナー」を育成することです。先ほど(第1回記事)、人的資本経営ではプロスポーツ型の人材マネジメントが大事だ、という話をしました。例えば日本の女子プロゴルフは、宮里藍さんというスター選手が出てきたことで裾野が一気に広がり、優れた選手が次々に出てきました。その流れは、現在の渋野日向子さんや畑岡奈紗さん、古江彩佳さんにまで続いています。トップランナーが、たった一人でその世界をまったく違う形に塗り替える、ということが起きたわけです。
ビジネスの世界でも同じように、一人あるいは少数のトップランナーが、既存の産業を一変させたり、新たな業界を創出したりすることがよくあります。だからこそ、プロスポーツ型の人材マネジメントで、突出した人材を育てる必要があると思っています。
羽生:誰もかれもを平等に伸ばしていくのではなくて、優れた才能に思いきった投資をする人材育成が必要だ、ということですね。
岩本:そのとおりです。ただ、日本のビジネス界では、独特の空気がトップランナーの出現を阻んでいるとも感じています。たとえば、トップランナーが何かを変えようとするときに、その変化で誰かが損をするなど、既存の枠組みが壊れることに過剰な懸念を表明する人たちが出てきます。それでは変革や創出が大きなうねりになりません。