人的資本経営ラボGROWIN' EGG

コクヨ 3カ月に1度、自分で働き方を選ぶ「実験中」

コクヨ株式会社 働き方改革室室長 新居臨さんに聞く(1)

コロナ禍を経て、在宅勤務をはじめとするリモートワークという働き方が日本国内の多くの法人企業で受け入れられつつある。しかし、「チーム力を高めるためには、やはり対面でのコミュニケーションが大切」「離れて働くことに伴うマネジメントの難しさから、出勤日数を増やしている」「とはいえ、従業員はワークライフバランスを保ち易い在宅勤務を希望」などの声も挙がり、“働く場所”についての価値観は、今なお混乱中、といえそうだ。そんな中で、働く場所を前向きに進化させている企業に、その戦略や最前線のスタイルを聞く。今回はコクヨの働き方改革室室長・新居臨さんに、コクヨが掲げる「Life Based Working」やコクヨ式ハイブリッドワークについて詳しく伺った。(今回は前後編のうち前編)
●お話を伺ったのは
コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部 働き方改革室 室長
新居 臨さん

聞き手 羽生 祥子、石原 直子(「人的資本経営ラボGROWIN’ EGG」編集長・副編集長)
文    米川 青馬

3カ月ごとに働き方を自分で選べる仕組みを導入

――具体的に、どのような施策を導入しているのですか?

新居:2022年から、始まっているのが「コクヨ式ハイブリッドワーク」です。働き方は3つのタイプ(オフィス中心タイプ、バランスタイプ、在宅中心タイプ)から個人が選択し、上司との対話を通じて個人とチームにとって最適な働き方を決定します。3カ月ごとに働き方を自ら選べるようになっており、たとえば担当するプロジェクトが佳境になり、チームで集まって業務した方が生産的な時期はオフィス中心タイプにして、仕事が比較的落ち着いていた3カ月間はバランスタイプにする、といった柔軟な変更が可能です。この働き方の決定は、個人の意思でタイプを決めますが、上司との対話・承認が必要です。組織/チーム全体で、個人の働き方を実現するための相互支援の意識行動も同時に進みます。

定期的にチームで振り返りを行い、働き方をブラッシュアップしています。各タイプの出社/リモート比率もあえて緩やかに設定しており、個人やチームの事情に合わせて柔軟に運用できるようになっています。なお、在宅中心タイプは現状は育児・介護・妊娠中など限られた人しか選べませんが、一方で育児期間を小学校3年生までから小学校6年生までに拡大しました。枠を作ると同時に枠を拡大することで、使いやすい制度に仕立てているのです。

バランスタイプが主流だが、オフィス中心タイプも少なくない

――3つのタイプの働き方を3か月ごとに選べるこの仕組みは、なぜ必要だったのですか?

新居:実は、2020年~2021年ごろのリモートワークの状況を精緻にデータで検証してみたところ、20代・30代の働きがいに関する従業員満足度が下がっていたことがわかったのです。特に20代は、満足度だけでなく成長実感も、出社比率とゆるやかに相関があることがわかりました。この分析結果を受けて、会社に出社する/自宅等でテレワークする、といった働き方変化の頻度は、社員の置かれた環境に応じて、もっと戦略的に選択してもらう必要があると考えるようになったのです。

3タイプの働き方のおおよその比率は、2023年12月現在、バランスタイプが約60%、オフィス中心タイプが約30%、在宅中心タイプが10%未満となっています。ガイドライン「Life Based Working」では、こうした働き方の実態データやエンゲージメントサーベイの結果も掲載しています。多くの社員がこのガイドラインに目を通して、働き方を自ら考えるきっかけにしてくれていると感じています。なので、これは単なるガイドラインではないな、と。今後、「自律共創文化をリードするインナーオウンドメディア」の位置づけをより明確にしていきたいと考えています。