なぜいま人的資本経営が注目されるのか?
オープニング鼎談:岩本隆×徳谷智史×羽生祥子(1)
情報開示に終わらせない、プロフェッショナルを育てる「攻めの経営」
パーパスから人材戦略までの一貫性、
個人と企業の対等な関係性も重要
徳谷:企業が何を成し遂げたいのか、というパーパスがあり、それを実現するにはどのような組織構造が必要か、それぞれの場所にどのような人が必要かを考え、その役割を果たせるように人々に投資をし、機会を提供し、プロとして働いてもらう。こうしたパーパスから人材戦略までの「縦の一貫性」を持たせることも、人的資本経営の重要なポイントです。
そして企業からの視点だけでなく、多様な価値観を持つ一人ひとりの意思やありたい姿をしっかり把握し、人々が、「この会社はそれを認め尊重してくれる」と思えるように、個と企業が対等な存在と考えることも欠かせません。私は人的資本経営の本質はこのように組織と人の関係を変えていくことだと考えています。
「人件費」という言葉からもわかるように、これまで企業にとって人というのはコストだった。それをなるべく小さくして利益を増やそうとしてきたわけですが、これからは人材を「資本」としてとらえ直し、そこへの投資こそが企業価値を高めるんだと考えを改めること。人的資本経営の第一歩はここから始まると思っています。
(第2回につづく)
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岩本隆(いわもと・たかし)さん
山形大学学術研究院産学連携教授
京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より山形大学学術研究院産学連携教授。外資系グローバル企業での最先端技術の研究開発や研究開発組織のマネジメントの経験を活かし、DIでは、技術系企業に対する「技術」と「戦略」を融合させた経営コンサルティングや、「技術」・「戦略」・「政策」の融合による産業プロデュースなど、戦略コンサルティング業界における新領域を開拓。
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徳谷智史(とくや・さとし)
エッグフォワード 代表取締役社長
京都大学卒業後、大手戦略コンサルティング会社に入社。国内プロジェクトリーダーを経験後、アジアオフィスを立ち上げ、同代表に就任。その後「いまだない価値を創り出し、人が本来持つ可能性を実現し合う世界を創る」というミッションのもと、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサルなど、トップ企業に対する企業変革のコンサルティングや、スタートアップ各社への出資・支援などを幅広く手がける。近年は、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組み、事業開発や、教育機関支援にも携わる。NewsPicksキャリア分野プロフェッサー。東洋経済オンラインなどにも連載を持つ。著書に『いま、決める力』等がある。Podcast「経営中毒~誰にも言えない社長の孤独」メインMC。
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羽生祥子(はぶ・さちこ)
「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」編集長
著作家・メディアプロデューサー、株式会社羽生プロ代表取締役社長。日経xwoman客員研究員、京都大学「令和版・ジェンダー論」講師。京都大学卒業(農学部入学、総合人間学部卒)。2000年に卒業後、渡仏。帰国後に無職、ベンチャー、契約社員など多様な働き方を経験しサバイバル。2002年編集工学研究所で松岡正剛に師事し「千夜千冊」に関わる。2005年日経ホーム出版社入社。2012年「日経マネー」副編集長。2013年「日経DUAL」創刊編集長。2018年「日経xwoman」総編集長。「日経ARIA」創刊編集長。2020年「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」始動。近著『多様性って何ですか? D&Iジェンダー平等入門』。内閣府「第4次少子化社会対策大綱策定のための検討会」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員等。2児の母、趣味はピアノと朝ラン。