真っ先に開示すべきは人材ポートフォリオ情報では?
創刊1周年記念特集:人的資本経営2023 編集部対談(後編)
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生成AIが事務系ホワイトカラーの仕事を奪い、人間の業務が激変
石原:2023年、人的資本経営以上に話題になっているのが「生成AI」です。いま私はAIでビジネスをしている会社に勤務していますが、この半年間、生成AIがものすごい勢いで進化を遂げているのを目の当たりにしました。世界中のありとあらゆるユーザーが日々使い方を試行錯誤しては、「こんな使い方があるよ」「こんなこともできるよ」とSNSなどにバンバン情報を公開しています。
この生成AIは、近いうちに間違いなく事務系ホワイトカラーワークに大革命を起こします。情報収集・書類や資料の作成・比較検討、それから実際にやると決まったことを最後までやり抜くことも含めて、事務系ホワイトカラーの仕事の大半は、人間よりも生成AIのほうが圧倒的に得意だからです。経済学者のシュンペーターにすればイノベーションとは「知識と知識の新結合」ですから、何万通りもの組み合わせを考えられる生成AIは、もしかするとイノベーションも人間より上手に考えられる可能性があります。ビジネス書やハウツー本を書くような仕事もAIは上手にやれると思います。それらの仕事がAIに奪われたら、事務系ホワイトカラーにいったいどんな業務が残るのか。それは、意思決定することと責任を負うこと。極論ですが、この2つだけかもしれないとすら思っています。
それどころか、今後はどの業界・業種でも、生成AIによってビジネスモデル自体が激変する可能性が十分にあります。たとえば、コールセンターのオペレータはすべてAIに置き換えられるかもしれません。そうすると社長1人しかいないコールセンターというのが生まれるかもしれません。ビジネスとしてはそのほうが断然儲かりそうですよね。
羽生:となると、これからの企業はAIを使いこなせる人材を多く採用しているかどうか、AIをきちんと使いこなしているかどうかが問われていく。。そして、人間に残された業務を、冷静かつ戦略的に見極めていく必要がある、と。このあたりも人的資本経営に関わる指標となりそうですね。
石原:初期はそうした指標が重要だと思います。そしてその先は、AIが事務系ホワイトカラーの仕事を代替するので、そもそも人材がどれだけ必要なのか、という話になってくる。