イケア「人の力を信じる」を、ビジネスに生かす真髄
究極の「人育て」企業:イケア・ジャパン(1)
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コワーカーの力を信じているから、安心してアップスキルできる
――特別な秘訣はない、と朝山さんは言っていましたが、十分特徴がありますよね。バリューのほかにも、何か特徴はありませんか?
朝山:バリューとは別に、私たちはコワーカー(従業員)に対して「We believe in people(人の力を信じる)」という約束をしています。具体的には、Equality(成長機会の平等な提供)、Inclusion(多様な人材の受容)、Security(長期的かつ安心安全な関係構築)の3つの軸で、さまざまな施策を推進しています。私たちがコワーカーの力を信じているからこそ、一人ひとりが安心して能力を発揮したり、アップスキルやリスキルをしたりできるんです。これが本当に大切なんです。
逆に言えば、私たちはほかに特別なアクションをしているわけではありません。他の企業と同じように研修やeラーニング教材を用意しているだけです。多少変わっているとしたら、「アクティビティ」の機会を設けている点でしょうか。
――社員全員で何か活動をするんですか?
朝山:はい、そうですね。例えば、今年2月に「サステナビリティデー」という社内イベントを開催しました。全国の店舗・ユニットのコワーカーも参加できるように、ハイブリットで開催し、サステナブルな社会の実現にむけてアイデアを出し合ったり、専門家へのインタビューをイベント内で紹介したりしました。こうしたことも一種のリスキルだと思うんです。サステナビリティに対する考え方や取り組みを変えるのですから、立派なリスキルでしょう?
――確かに。リスキルというと、今は猫も杓子も「デジタル人材を育成せよ!」という風潮です。
朝山:もちろん、Linked Inラーニングでデジタルテクノロジーやリーダーシップ、ビジネススキルを学んだり、外国語を取得できるロゼッターストーンなど、オンライン学習プラットフォームは用意しています。
――イケアのリスキルは、より現実的ですし、本質的ですね。ところで女性管理職が5割を超えているのは、日本企業から見ると恐ろしく高い数値です。これは最初から高いんですか?それとも何か変化があったのでしょうか。
朝山:イケア・ジャパンでは、2014年に、学生・短期契約者を除く全コワーカーを正社員とする「短時間正社員制度」を導入しました。パートタイマーだと安心して働けず、能力を最大限に展開できないと考えたからです。この効果は明らかで、特に女性コワーカーの退職率が大幅に減るとともに、女性のマネジャー志望者が増えました。短時間正社員制度が、女性管理職比率の上昇にプラスに働いたことは間違いありません。ただ、女性社員比率は65%(2022年12月時点)なのに、女性管理職比率がまだ50%程度に留まっているのは、私たちにとっては課題です。今後はこの数字をさらに高めたいと考えています。