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サステナビリティ/サステナビリティ報告書

サステナビリティ(持続可能性)とは、地球環境・国・社会・地域・企業・個人などが持続的に良い状態でありつづけられることを指す。

近年では、企業活動にあたって、さまざまなサステナビリティに配慮した行動をとることが強く求められるようになっている。たとえば、欧州委員会では「コーポレート・サステナビリティ・デューデリジェンス指令案」を2022年に公表するなど、人権・環境に関する企業活動の規制を強く求めている。

具体的な行動指針には、次のようなものが挙げられる。第一に、企業は、地球環境のサステナビリティに配慮して経営することを求められている。事業における各プロセスにおいて、地球環境に配慮しない行動や害を与える行動を企業がどれだけ抑制できるかについて厳しい目が向けられているのだ。たとえば、自然や生物多様性を守りながら原料を調達すること、産業廃棄物をできるだけ削減し、商品リサイクルの仕組みを確立すること、工場・研究所・オフィスなどのCO2排出量をゼロに近づけることなどが企業の責務になっている。たとえば、自動車業界は、CO2排出量削減を目指して、一斉に電気自動車などへのシフトを進めている。また、建築・住宅業界では、省エネと創エネ・蓄エネによって、エネルギー消費量の収支ゼロを実現するビル(ZEB)や住宅(ZEH)への注力が始まっている。

第二に、企業は、人権という観点から、社会や地域の持続的発展というサステナビリティに貢献することを求められている。フェアトレード(発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動)を行ったり、児童労働や強制労働をしている地域・企業との取引を止めたりすることは、社会のサステナビリティ向上につながる行動の一例だ。障害者雇用に力を入れたり、地域コミュニティと協働したりすることも、社会のサステナビリティに対する貢献になる。

第三に、企業は、顧客感情のサステナビリティを意識する必要もある。たとえば、安心安全な製品・サービスを提供して、顧客の信頼を獲得すること、上記の地球環境のサステナビリティ、社会・地域のサステナビリティへの配慮によって、顧客自身が持つサステナビリティへの貢献の意識に寄り添うことなどで、顧客感情のサステナビリティを高めることができる。

さらに最近では、企業がサステナビリティに関してどのように取り組んでいるのかを開示することが強く求められるようになっている。多くの機関投資家が、サステナビリティに配慮した行動を企業に求めており、投資判断にもそうした行動の有無や多寡を組み入れるようになりつつある。そのため、多くの企業が国際的な基準やフレームワークに準拠したサステナビリティ報告書を定期的に作成し、公表するようになっている

サステナビリティ報告書での記載事項に関する基準には、米国の非営利団体グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)が定めている「GRIStandard」サステナビリティ会計基準審議会(Sustainability Accounting Standards Board)が定めるSASBスタンダードなどがある(※1)国際会計基準財団(IFRS財団)が提示する

(※1)なお、SASBを統合した国際会計基準財団(IFRS財団)は、2022年に新しく「IFRSサステナビリティ開示基準」の草案を提出しており、今後、この基準も国際基準として広く受け入れられていくであろうと考えられる。

世界的にサステナビリティに関する評価が高い企業には、独自の脱炭素ロードマップを強化してESGにリンクされた転換社債を世界ではじめて発行した総合電機業のシュナイダーエレクトリック(フランス)、2025年までに自社でのエネルギーの生成と運用においてカーボンニュートラルを達成する見込みの電力会社オーステッド(デンマーク)などがある。日本では、日本で初となる環境・社会的責任に関する取り組みや成果をまとめた報告書を1998年に公表した東京ガス、2005年からCSR報告書を発行しているトヨタ自動車などが高く評価されている。

なお、サステナビリティ報告書に記載する内容と企業の知的資本の状況、財務指標を関連づけて説明する統合報告書を作る動きも近年盛んになりつつあり、サステナビリティ報告書は統合報告書に吸収されることもある。