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サバティカル/サバティカル休暇

サバティカルとは、一定以上の長期勤続者に与えられる長期休暇を指す。旧約聖書の教えである、6日間働いた後に1日訪れる安息日を意味するラテン語"sabbaticus"(安息日)に由来する。「サバティカル」だけでも休暇の意味を含んでいるが、日本では「サバティカル休暇」という言い方も一般的である。

サバティカルは、伝統的に大学教員が活用してきた制度である。普段は学生の指導・講義や学内業務で多忙を極める大学教員が、一定期間ごとに発生するサバティカル(研究休暇)の権利を活用すれば、半年や1年といった期間で教育現場を離れ、国内外の研究機関に滞在して新たな研究に集中したり、論文や書籍の執筆に専念したりできる。

最近は、企業がサバティカルを導入する事例が生まれている。大学では「研究に専念するための期間」と目的が明確になっているが、企業による従業員のサバティカルは多種類ある。留学や大学院での学習、他企業での期間限定の勤務や社会人インターンなどの目的に限るものもあれば、単にリフレッシュを目的にすることや、介護や育児に専念すること、パートナーの転勤や海外赴任に帯同することなどに活用することもでき。例えば、ヤフーでは、「自分のキャリアや経験、働き方を見つめ直し、考えるための休暇制度」として最長3か月のサバティカル制度があるほか、「普段の業務を離れて専門的知識や語学力をより集中的に習得できる機会」として最長2年の勉学休職制度がある。また全日本空輸(ANA)では勤続1年以上の正社員が、理由や目的を問わず最大2年まで取得できるサバティカル制度を導入しており、休職期間中は無給だが社会保障関連費は会社が負担する、としている(企業事例は2023年2月現在)。

サバティカルの導入によって、企業は、従業員満足度やエンゲージメントの向上、新しいスキルや視点(を持った従業員)の獲得、自律的なキャリア形成支援などの効果が期待できる。また、先進的な働き方を認めてくれる会社であるという社会的イメージの形成にも役立つだろう。

働く個人にとっても、サバティカルを活用することで、普段の業務では得られないような新たな知識・能力・視座の獲得、新たなアイデアの創出などの機会を得られる可能性がある。また、それ以外の目的であっても、会社を辞めずに中長期の自由に使える時間を持てることで、生活とキャリアにおけるさまざまな変化に適応する新しい手段を持つことにもなるだろう。

現在のところ、日本では、企業でのサバティカルの導入について定めた法的なルールや手順は存在しない。サバティカルの導入にあたっては、休暇中は有給なのか無給なのか、使途を限定するのか自由にするのか、サバティカル利用のための条件や対象者をどうするのかといったルール作りに課題がある。さらに、サバティカルで人員が減る部門やチームで業務に支障が生じないようなサポート体制作りや、復職時の支援体制作りなどもクリアする必要がある