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リモートワーク/テレワーク

リモートワーク(remote work)/テレワーク(telework)とは、会社のオフィス以外の場所で働くことを指す。厚生労働省などでは、「テレワーク」という単語の方が使われることが多く、同省の定義ではテレワークとは「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」となっている。

リモートワークに類似する言葉はさまざまにあるが、たとえば働く場所の観点からの分類では、自宅で働く「在宅勤務(Work from Home)」、出張先のホテル・移動中の車両・飲食店などで働く「モバイルワーク」、企業が指定するサテライトオフィスで働く「サテライトオフィス勤務」などがある。観光地やリゾート地などに滞在して、休暇を織り交ぜながら働く「ワーケーション(WorkとVacationを繋げた造語)」という言葉も生まれている。

リモートワークは「場所にとらわれない仕事のスタイル」を実現できることで、働き方改革の手段として重視されていたが、2010年代にはその浸透はなかなか進まなかった。理由の一つは、従来のオフィスや店舗、工場や作業場などに人が集まって協力しながら働くスタイル以外の働き方は難しいと、経営者も働く人々も考えてきたことである。また別の理由として、実際の業務遂行上、リモートワークに適さない職種や職場があることから、制度としてリモートワークを整備する場合にも、対象者や日数などが限定されてきたということもある。日本だけでなく世界的にも、浸透度合いに差はあれども同様の傾向であったといえる。

だが、2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、リモートワークは一挙に広まった。人と人との接触を減らすことができるため、感染症拡大の防止に有効であると考えられたことが大きな理由であり、一時は、全社員の出社を禁じ、自宅からのリモートワークを原則とする企業も現れた。

2023年現在、リモートワークの実施度合い、活用度合いには企業によるばらつきが見られる。工場や店舗などの“現場”を持つ企業では公平性の観点から、デスクワーク主体の社員に対しても、リモートワークできる日数などに制限を設けることもある。また、リモートワークが主体になることで、社内コミュニケーションや仕事を通じた教え合い・学び合いが減少していることに危惧を抱く会社も生まれており、こうした会社でも出社を推奨する傾向がある

一方で、働く場所の自由度を得ただけでなく、“通勤”のない生活を経験した個人にとっては、リモートワークがどの程度許容されているかは、会社を選んだり転職を考えたりするうえでの重要な指標となりつつある。リモートワークの権利をどの程度認めるのか、また、どのような場合に出社を求めるのか、あるいは、敢えて出社する日にはどのような業務や活動を行うかといった、リモートワークを含むワークルールのリデザインは、企業にとって今後の重要なテーマであるといえる。

リモートワークを推奨する企業では、勤務条件から居住地と勤務地に関する制限をなくし、「全国(あるいは全世界)どこからでも勤務可能」に変えたり(例:ユニリーバ・ジャパン等)、転勤を原則廃止にしたり(例:NTTグループ等)したケースもある。また、働く場所だけでなく、勤務日や勤務時間の自由を与えて、「いつ働いてもよい」としている会社(例:サイボウズ等)もある。そうした会社では、従業員が地方に移り住んだり、週休3日にしたりするなど、フレキシブルな働き方を選択できるようになっている。このように働き方の自由度が高まることは、地方在住者の働く機会やキャリアの選択肢を増やすことにもつながると考えられる(例として挙げた企業の取組みは2023年1月現在)。