人的資本経営ラボGROWIN' EGG

イケアのアップスキルを高める「社員の大人度」とは

究極の「人育て」企業:イケア・ジャパン(2)

人的資本経営のキーポイントのひとつ、人材育成に秀でた究極の「人育て」企業を紹介する。イケアには、人的資本経営やリスキリングといった言葉が話題になる前から、コワーカー(従業員)が主体的にアップスキルやリスキルを試みる社風と仕掛けがあるという。その社風・仕掛けとは、具体的にどのようなものだろうか。また、イケア・ジャパンPeople and Cultureのトップが考える「人を育てる理想のマネジャー」とは。
聞き手/羽生祥子(「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」編集長) 文/米川春馬

ベテランにも全員にフィードバックが届き、改善を求められる

――イケアの良い面をたくさん教えてもらいました。では、厳しい面についても教えてもらえますか? 入社したらイメージと違う、ということのないように(苦笑)。

朝山:厳しい面ですか……。そうですね、フィードバック(評価を伝えること)は、ベテランでも若手コワーカーと同じようにしっかりやっています。例えば評価の際、上司からビジネス・バリュー・リーダーシップの3軸で全員にフィードバックが届きます。自分の成長には自分で責任を持つことです。責任を持つとは、日々の業務の中でも“自分はどこが強くてどこが課題なのか”が自分で分かっていること。自分からフィードバックを求めて行動し、改善していくことが大切です。フィードバックは、イケアの中では“ギフト”です。そのギフトを受け取るも受け取らないも、自分次第なのです。

イケアのオフィスにはキッチンスペースがあり、日常的に社員が集う。

――日本で通常使われている「フィードバック」のイメージは、もっとふわっとしたものだと感じます。アンケートで慣習的に「よかったです」と8割の人が答えるような。でもイケアでは、自分をより良くするために、厳しい声に正面から向き合って、行動に移さなければいけない。

朝山:そうですね。全体的に、イケアでは「大人」じゃないとやっていけないでしょうね。

――大人? 面白い表現ですね。会社の指示を待っているだけではイケアで働けないと。

朝山:会社と自分はいつも対等だという認識がなくては、長く働きつづけられません。「自分のキャリアは自分で決めるもの。自分の成長のために何の学びが必要か?どう自分で学ぶのか?」自分の行動や成果に対する責任も取ります。まじめに一生懸命仕事をしている人が失敗をする特権を持っています。もし失敗したら、その失敗から学べばいいのです。そして、また成長できます。イケアで長く活躍しているのは、そうした考え方の持ち主ばかりです。

なお、イケアでは全社的な意思決定の際に、コワーカーの対話を重視しています。みんなで十分に話し合い、熟慮して納得した上で決める傾向があるんですね。ですから、意思決定には比較的時間がかかるほうです。こうした点も、大人な会社ならではと感じています。