ダイバーシティを強みにしてイノベーションを創出する
イベントレポート「第2回スクランブルエッグ」(1)
石原直子(「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」副編集長)
文/米川春馬
2022年から、カゴメのD&Iには「for イノベーション」がついた
――カゴメの経営戦略におけるD&Iの位置づけを教えてください。
曽根:カゴメは、トマトケチャップやトマトジュース、生のトマトまで、トマトを中心した製品を広く販売してきました。ですが、いまではトマトだけでなく野菜を幅広く取り扱っており、日本の緑黄色野菜消費の18.5%、総野菜消費量の4.9%相当を供給するまでになりました。今後はこの方針をさらに強め、2025年までに「トマトの会社」から「野菜の会社」になることを目指しています。これが1つ目の長期ビジョンです。
2つ目の長期ビジョンが、2040年頃までに社員から役員まで、各職位の女性比率を50%にすることです。カゴメは個人株主比率が99%程度と非常に高く、その半数以上は女性です。お客様も女性が大変多い。女性に支えられている会社ですから、女性活躍を推進するのは当然のことです。
私たちは2015年にダイバーシティ推進室を立ち上げ、女性活躍推進に注力してきました。現在は、女性総合職採用比率71.0%(2022年4月新卒入社者)、入社10年以内女性継続就業割合・男性比1.0(22年3月末時点)、男性育休取得率78.0%(2022年1~12月)、女性管理職比率9.5%(2022年12月時点)となっており、成果は確実に上がっています。
ちなみに、カゴメのダイバーシティ推進室は、一定の成果を上げた2018年にいったんクローズしたんですよ。そして2022年に「D&I for イノベーション推進室」と名称を変えて再スタートを切ったのです。私自身も、ダイバーシティ推進室長を務めた後は新規事業開発に関わっていたのですが、ふたたびD&I for イノベーション推進室長となりました。
――最初のダイバーシティ推進室は3年で解散したのですね。ダイバーシティ推進は集中的に行ったほうがいい、ということですか?
曽根:働きやすい環境をつくるという意味では、そうかもしれません。カゴメではダイバーシティを経営戦略の1つに定め、制約があっても活躍できる環境づくりを3年間で一気に実現しました。多様性を活かす素地をつくることができたわけです。3年と期間を区切ったことで急速にレベルアップしやすかった面はあります。
ただ、今回「D&I for イノベーション推進室」をあらためて立ち上げたわけですから、結果論をいえば、やはり推進室は必要なのだと考えています。私たちはいまも女性活躍に関する課題を抱えており、それを解決していくためには推進組織が要るのです。