人的資本経営ラボGROWIN' EGG

人的資本経営は、年功序列や「働かない中高年層」を変えられるのか?

オープニング鼎談:岩本隆×徳谷智史×羽生祥子(2) 年齢によらない価値発揮ができる組織に変革を

「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」の創刊記念特集は、引き続き人的資本経営への造詣が深い岩本隆さん(山形大学学術研究院産学連携教授)、エッグフォワードのファウンダーで代表取締役社長の徳谷智史、「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」編集長の羽生祥子の3人による鼎談をお送りする。第2回のテーマは、「年齢差別」と「企業変革」だ。日本企業独特の年齢差別とは何か。日本企業を変革するにはどうしたらよいのか。3人が対話を重ねた。

大企業を変革するには最低2年は必要だ

羽生:ところで、徳谷さんはいくつもの企業の変革を支援してきたわけですが、企業はいったいどのくらいの期間で変わるものなんですか?

徳谷:スタートアップならすぐに変化することもありますが、日本の大企業の場合、半年で兆しが見えてきて、明らかに変わるまでには最低2年はかかるというのが実感です。エッグフォワードが企業の変革と向き合う時には、「何のための事業なのか?」「どこを目指すのか?」といった本質論を経営陣と話し合うところからスタートします。その上で具体的な事業戦略や人事戦略に落とし込んでいきますから、ある程度の時間が必要です。

でも、単に従業員満足度調査の数値を上げるだけなら、実は短期間で簡単にできます。従業員の皆さんの不満を解消すればいいだけですからね。しかし、それはうわべの変化に過ぎません。企業を本質的に変えることと、従業員を満足させることは別ものなのです。年功序列・定年退職・新卒一括採用などの仕組みを根本から変革するのは、痛みを伴うことです。従業員満足度調査の数値が一時的に下がることも十分にありえます。しかし、企業の将来のために必要なのであれば、たとえ痛くても、いまのうちに変えたほうがいいのです。

徳谷智史(エッグフォワード代表取締役社長)は、企業の変革を支援してきた経験から、うわべだけの変化では意味がないと警鐘を鳴らす
  • 岩本隆(いわもと・たかし)さん

    山形大学学術研究院産学連携教授

    東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ、日本ルーセント・テクノロジー、ノキア・ジャパン、ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より山形大学学術研究院産学連携教授。外資系グローバル企業での最先端技術の研究開発や研究開発組織のマネジメントの経験を活かし、DIでは、技術系企業に対する「技術」と「戦略」を融合させた経営コンサルティングや、「技術」・「戦略」・「政策」の融合による産業プロデュースなど、戦略コンサルティング業界における新領域を開拓。

  • 徳谷智史(とくや・さとし)

    エッグフォワード 代表取締役社長

    京都大学卒業後、大手戦略コンサルティング会社に入社。国内プロジェクトリーダーを経験後、アジアオフィスを立ち上げ、同代表に就任。その後「いまだない価値を創り出し、人が本来持つ可能性を実現し合う世界を創る」というミッションのもと、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサルなど、トップ企業に対する企業変革のコンサルティングや、スタートアップ各社への出資・支援などを幅広く手がける。近年は、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組み、事業開発や、教育機関支援にも携わる。NewsPicksキャリア分野プロフェッサー。東洋経済オンラインなどにも連載を持つ。著書に『いま、決める力』等がある。Podcast「経営中毒~誰にも言えない社長の孤独」メインMC。

  • 羽生祥子(はぶ・さちこ)

    「人的資本経営ラボGROWIN' EGG」編集長

    著作家・メディアプロデューサー、株式会社羽生プロ代表取締役社長。日経xwoman客員研究員、京都大学「令和版・ジェンダー論」講師。京都大学卒業(農学部入学、総合人間学部卒)。2000年に卒業後、渡仏。帰国後に無職、ベンチャー、契約社員など多様な働き方を経験しサバイバル。2002年編集工学研究所で松岡正剛に師事し「千夜千冊」に関わる。2005年日経ホーム出版社入社。2012年「日経マネー」副編集長。2013年「日経DUAL」創刊編集長。2018年「日経xwoman」総編集長。「日経ARIA」創刊編集長。2020年「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」始動。近著『多様性って何ですか? D&Iジェンダー平等入門』。内閣府「第4次少子化社会対策大綱策定のための検討会」委員、厚生労働省「イクメンプロジェクト推進委員会」委員等。2児の母、趣味はピアノと朝ラン。